日本臨床工学技士会理事長に聞いた
臨床工学技士に求められていること、今後の方向性について
INTERVIEW
日本臨床工学技士会理事長
本間崇氏
現代医療には医療機器が必要不可欠です。
高度化する医療機器の保守管理を担う臨床工学技士の存在は、臨床現場でどのように変わり、求められる存在になっていくのでしょうか?
臨床工学技士としてのキャリアの築き方やスキルアップについて、臨床現場にこだわり、治療に参画することの重要性について、これからの臨床工学技士の展望を、日本臨床工学技士会理事長である本間崇氏にお話を伺いましたのでご紹介します。
臨床工学技士は国家資格として1988年に誕生しました。
国家資格になった頃の臨床工学技士の仕事は、人工透析、人工心肺、手術、機器管理が主なものでした。
近年は医療機器の進歩により、カテーテル手術や集中治療室などの業務が増えており、
2021年には法律改正が行われ、輸液ポンプによる薬液注入(静脈路確保を含む)や内視鏡外科手術のビデオカメラの操作など、医師らが行っていた医療行為が追加され業務が拡大しております。
コロナ禍でエクモや呼吸器のことがクローズアップされていますが、7~8割の技士は透析業務に就いており、多くは透析のみではなく他業務も兼務しています。現在の臨床工学技士は、院内の医療機器管理をはじめ、様々な臨床業務に従事することを求められており、ゼネラリストとして幅広い業務に対応できる力が求められています。
日本臨床工学技士会としては、業務範囲の拡大をポジティブに受け入れております。
厚生労働省が「医師の働き方改革」を2024年開始予定と打ち出しており、タスク・シフト/シェアが叫ばれている中で、2021年から「臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修」を実施しております。基礎研修ではオンデマンド型eラーニングで20時間かけて基本的な知識を習得し、実技研修では2日間かけて2人1組でシミュレータを用いたトレーニングを行っています。
今後も臨床工学技士が請け負える業務があれば、活躍の場を増やしていきたいと考えております。
臨床工学技士はこれまで業務拡大してきた実績があるからだと考えています。1988年より前は臨床工学技士という国家資格もなく、人工心肺や透析も医師などが行っていた。ただ、先輩技士たちが各方面に働きかけてくれた結果、国家資格として誕生し、現在は人工心肺を臨床工学技士が行って医師は手術に専念できるようになり、透析に至ってはどこの施設にも臨床工学技士がいる。このように、先輩たちの地道な活動が実績となり、これまでもタスク・シフト/シェアが行われてきているということで、今後もできるであろうと評価をいただいていると考えています。
先輩方が行ってきたことが実を結んできており、今後発展をさせていくことが技士会としての役目。与えていただいたものは大きいので気を引き締めて着実に行っていきたいですね。
もちろん。臨床工学技士としてレベルアップを図らないといけないです。
現在技士会では、専門性を高め新たな知識や技術を培う基盤つくりとして、「専門臨床工学技士」の7領域、臨床工学技士としての基礎を固める「認定臨床工学技士」として3領域を設けています。以前は専門制度のみでしたが、4年前に新たに認定制度を設けました。
認定臨床工学技士は、基礎的な認定でありゼネラリストとして活躍をしていくための知識を得ることができるものであり、専門制度は、狭き門であり合格率は10~20%と本当のスペシャリストでないと通らないような制度になっています。
臨床工学技士の業務は多岐に渡るたるため、まずは幅広い基礎知識を身につけてゼネラリストを目指し、将来的には専門性を高めスペシャリストとして指導者レベルを目指していただければと考えております。
現状、臨床工学技士が行っていたり、業者に委託をしているところなど分かれています。
ただ、機器管理をする上で「どのように臨床に繋がっているのか」ということを理解しているのといないのでは大きな違いがある。
操作原理を理解するだけではなく、最終的に患者さんに対してどのような影響を与えるのかを理解していることが、より良い医療の提供に繋がると考えておりますので、臨床も機器管理もどちらも行うことが望ましいと考えています。
病院の規模によっては多数の医療機器を抱えており、現在の医療では機械の管理はとても重要であるため、臨床工学技士として最低限の機器管理はできるようにしておくと良いですね。
医療機器の管理は臨床工学技士として基本的なところであり、それをベースに持った上で『臨床』を行うかが重要だと考えています。
現状タスク・シフト/シェアが進み新しい業務を開拓しているが『いかに患者さんの治療に参画することができるか』それが国家資格である、臨床工学技士:CEでありMEとの違いだと考えております。
現在の医療において医療機器は必要不可欠で、その臨床現場にあって、操作原理を理解しているのが臨床工学技士の強み。医師の指示をうけて仕事をするのが法律で決められた役割だけど、言われたまま右から左ではなく、専門制度、認定制度でスキルアップをし、医師の指示を理解した上でさらに良い提案ができる。治療に参加できる技士になると良いですよね。それには5年から10年かかるとは思いますが、徐々にどの領域にも専門性の高い臨床工学技士が出てきてくれていると感じております。
業務を積極的に進めていくため27項目を、要望として厚生労働省に提出し、6項目が認められ、法令改正によりできることが広がりました。
その為、今後は集中治療や、内視鏡外科手術が多くなると見込んでおり、どこまでの業務を臨床工学技士が担当をするのか医師と相談しながら進めていきたいと考えております。
一方で、透析も地域包括ケアの中、自宅で患者さん自らが管理できるCAPD(腹膜透析)に移行することによって、患者さんの自宅に行って機器管理をしたり、患者さんに助言をするなどを一昨年くらいから行ってきました。地域包括ケアが進んでいる中で、技士会としてもどのような方向性にもっていくか慢性透析にも視点を置いて動いていく予定です。
『急性期医療』と『在宅医療』と矛盾をしているようではありますが、どちらも地域になくてはならないし、機械がないと成り立たない。
専門家である臨床工学技士が担当していくことが望ましいと考えております。
もちろんあります。しかし、実績を積まないと次のステップには進むことができないと考えております。昨年から進んできたタスク・シフト/シェアですが、告示研修を受けた技士が現場でいかに働いてくれるかにかかっています。まずは与えられたことを確実に行い、実績を積む。中途半端にならないようにすること。足元を整えることが重要だと考えております。
『いのちを支えるエンジニア』と呼ばれるように、我々が医療機器を操作することによって「助かる命を助ける」というのがコンセプトにあります。 臨床での活動に重きを置き、それをやりがいに繋げていく。そのようにしていかないと、医療業界で生き延びていくことはできない。
病院の中核を担う存在になってほしいと考えております。
臨床という括りの中で『3本の指(医師・看護師・臨床工学技士)』に入れる存在となり、チーム医療を回せる医療機関になくてはならないに存在になることができればと考えております。
工学の知識がある人は多いが、その知識をもって患者さんに寄り添うことができるかが重要であり、医療機器が高度化をしてきているが、機器の操作原理を理解していかに患者様の健康状態をよくすることができるか、いのちを救うことができるのかを考え、臨床工学技士として勤めてほしいし、それが我々のステータスだと考えております。
臨床で活躍をしたいと、想いを持っている方はぜひ臨床工学技士を目指していただきたいです。
本間理事長のお考えやご経験を踏まえ、現代における臨床工学技士の在り方やキャリア像について、具体的にお話をしていただきました。
法令改正に伴う業務の拡大や、タスク・シフト/シェアにより、社会からも注目をされ、求めらることも多い臨床工学技士ですが、
「いかに臨床に携わるのか」を重要視されており臨床を突き詰めていくことにより、
今後、臨床工学技士が医療機関になくてはならない存在になれるだろうということを感じました。
転職を考える際に、「自分には何ができるだろうか」「将来どうなりたいのか」とお悩みになる方が多くいらっしゃいます。
転職先の条件や業務内容はもちろん大切ですが、目の前にいる臨床工学技士の方のキャリアビジョンを理解し、
社会からのニーズを伝えながら共に未来を考えていくことが必要で、転職サポートを行う弊社の在り方や存在意義にも繋がる点が多いと考えております。
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