臨床検査技師が働く場所は多岐にわたりますが、一般社団法人日本臨床衛生検査技師会の調査によると、全体のうち約7割の臨床検査技師は病院に勤務しています。このように臨床検査技師の職場として王道ともいえる病院ですが、どのような働き方をするのかがわからないため知りたいという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、病院で働く臨床検査技師の業務内容やメリットデメリット、病院勤務に向いているのはどういう人かということについて、詳しく解説します。最後までお読みいただくことで、臨床検査技師として病院で働いてみるべきかどうかを判断するための材料が得られるはずです。
1. 病院での1日
臨床検査技師の病院勤務では、病床数や救急受け入れ状況にもよりますが、シフト制で働くことがほとんどです。シフトの内容は、日勤・当直・休日勤務になります。これは、入院や救急外来の患者さんに対応するため、24時間体制で検査ができるようにしておかなければならないからです。
以下では、日勤の場合の一般的なスケジュールをご紹介します。当直の場合には、その後翌日まで勤務を続けることになります。
8:15 | 出勤 |
8:30~9:00 | 検査機器の立ち上げや業務分担確認などの始業準備 当直者からの引継ぎ |
9:00~12:30 | 入院患者の検体回収・検査 外来患者の生理機能検査 外来患者の検体採取・検査 |
12:30~13:30 | 交代で休憩 |
13:30~16:00 | 入院患者の検体・生理機能検査 検査結果報告書の作成 物品のチェック・補充 翌日分の検査準備 |
16:30 | 当直者への引継ぎ |
17:00 | 退勤 |
2. 病院での仕事内容
病院に勤務する臨床検査技師の仕事は、入院および外来患者さんの検査を行うことです。一定以上の規模の病院では、主な検査を院内で行うことができます。そこで臨床検査技師は数名~数十名で協力し、各種検査を正確かつ迅速に行い、その結果を医師に伝えることで診断を助けるのです。
病院で行われる検査は、その病院の規模や特徴によって異なりますが、一般的なものは以下のようになります。
検体検査 | 生理機能検 |
・尿・便などの一般検査 ・血液学的検査 ・生化学的検査 ・微生物学的検査 ・遺伝子検査 ・病理学的検査 | ・心臓系検査 ・脳波検査 ・眼底写真検査 ・呼吸機能検査 ・超音波検査 ・磁気共鳴画像検査(MRI) ・熱画像検査 |
これらの検査を、医師の指示に従って実施します。病院では、検査数が多く、急患が発生して臨時の検査が入ることもあるため、臨機応変に対応する力が求められます。また、当直制をとっている病院がほとんどであり、夜間は自分一人で全ての検査に対応しなくてはならない場合もあるため、その病院で行われる検査全般をこなせるようになることも必要です。
3. 病院で働くメリットデメリット
臨床検査技師としての病院勤務がクリニックや臨床検査センターと異なる点は、多種多様な検査を実施すること・24時間体制が必要なこと・多くの人(患者さん・スタッフ)とかかわることです。この特徴によって、以下のようなメリットとデメリットが生まれます。
【メリット】
・数多い検査数や種類に全般的に対応することで、経験値が上がる
・多くの患者さんやスタッフとかかわることで、コミュニケーションスキルが上がる
・スタッフの数が多いため、協力や切磋琢磨できる
・スタッフの数が多いため、休みの希望に融通が利きやすい
・当直手当がもらえる
【デメリット】
・多様な検査に対応できるスキルが必要
・当直をしなければならない
・シフト勤務になる(カレンダー通りではない)
・多職種とスムーズにやり取りする力が求められる
ご覧の通り、メリットとデメリットは裏返しの関係にあります。同じことでも自分はどのように捉えるかを考えて、メリットデメリットの大きさを判断するとよいでしょう。
4. 病院がおすすめな人
臨床検査技師として病院で働くことがおすすめの人とは、病院で働くことのデメリットをあまり感じず、メリットの方に価値を見出せる人です。つまりは「多数・多様な検査に対応でき、シフト勤務になることや多くの人とコミュニケーションをとりながら働くことが苦にならない人」ということになります。それらをむしろやりがいに感じるという人であれば、迷わず病院勤務を選ばれるとよいでしょう。
以下のような考えをもっている方は、病院勤務を経験してみてはいかがでしょうか。
・一度は臨床検査技師として王道の形で働いてみたい
・さまざまな種類の検査を経験したい
・緊急時の検査対応ができるようになりたい
・仲間が多い環境で働きたい
・さまざまな人とやりとりしてコミュニケーションスキルを磨きたい
・シフト勤務をしてみたい、または苦にならない
5. まとめ
以上のように、臨床検査技師として病院勤務をすることは、緊急時を含めた幅広い検査の経験を積むことや多くの人とやりとりできる力を磨くことにつながります。当直があるなどシフト勤務になってしまう場合が多いですが、それが気にならないようであれば働いてみてはいかがでしょうか。特定の検査に集中してとことん突き詰めたいという方には向きませんが、新卒でいろいろ経験したい・視野を広めたいという方にはおすすめです。病院では臨床検査技師の数が多いため、求人の数も多くなります。そのため病院勤務には、「採用されやすい職場」としての魅力もあるといえます。