臨床検査技師の職場の一つに「製薬会社」があります。製薬会社での仕事は「臨床開発モニター(CRA)」と呼ばれるもので、自社製品の治験を実施する病院と交渉して、企画や契約、進捗管理を行なうことになります。

治験に関する知識だけでなく、高いコミュニケーション能力も必要ですが、高収入が期待できる仕事と言えるでしょう。

今回は、臨床検査技師として製薬会社で働くことに興味を持っている方のために、仕事内容や病院などでの働き方の違い、どのような人が製薬会社での仕事に向いているのかなどについて解説します。

1. 製薬会社での1日

最初に、製薬会社で臨床開発モニター(CRA)として働く場合、どのような1日を過ごすことになるか、スケジュールの1例を見てみましょう。製薬会社でどのような仕事を行うかイメージしてみてください。

 8:45~9:30

オフィスに出社して、メールや郵便物の確認を行う。治験責任医師や治験コーディネーターから送られてくるメールを確認し、必要があれば返信します。

 9:30~12:00

本日の業務を確認し、同じプロジェクトを担当するほかのCRA(臨床開発モニター)と打ち合わせをします。担当施設への訪問の予定がある場合には、交通経路や時間の確認をしたり、治験薬の出庫を行ったりします。

 12:00~13:00

昼食

 13:00~13:30

担当施設に移動します。製薬会社にもよりますが、月の半分近くは担当施設を訪問することが多く、施設が遠方にある場合は宿泊を伴う出張が必要なこともあります。

 13:30~14:00

担当施設に到着したら、施設のスタッフに挨拶をし、治験担当医師や治験コーディネーターと打ち合わせを行います。

 14:00~17:00

打ち合わせが終わったら、治験のモニタリングを行います。症例報告書をチェックして治験実施計画に違反や逸脱がないかを確認します。

 17:00~17:30

担当施設での業務が終わったら、医師や治験コーディネーターに業務内容や伝達事項を報告して、次回の訪問予定日などを伝えます。

 17:30~18:00

事務所へ移動して帰社します。担当施設が遠い場合には自宅に直帰することもあります。事務所に帰ったら、業務について報告したり、モニタリング報告書を作成したりして業務は終了になります。

2. 製薬会社での仕事内容

製薬会社での1日のスケジュールから、大まかな仕事内容は分かったかと思いますが、さらに詳細な仕事内容について、治験前、治験中、治験終了時の3つに分けて説明していきます。

 治験開始前

治験開始前には、治験を実施する医療機関や治験責任医師を選定する仕事があります。

選定にあたっては、対象医薬品の分野での実績などを考慮して検討し、医療機関に治験の依頼を行い、承諾が得られれば契約を締結します。

治験は治験実施計画書に基づいて進められていきます。

 治験実施中

治験実施中は治験の進捗を管理するのが仕事になります。治験実施計画書にのっとって正しく治験が進行しているかを確認します。

また、症例報告書の回収も行って、医師が記載したデータに間違いがないかをチェックします。帰社後にはモニタリング報告書を作成し、最終的な確認を行います。

 治験終了時

すべての被験者への薬品の投与が終了したら、症例報告書や治療薬の回収を行います。すべての症例報告書を最終確認し、記入漏れや間違いがないことを徹底的にチェックします。

問題がなければ治験実施責任医師に治験の終了を報告して、治験が終了します。

3. 病院や他施設との違い

製薬会社で働く場合、病院や他の施設で働くのと比較すると、どのような点が異なるのでしょうか。ここでは働き方の違いと、給与の違いの2つに絞って考えてみましょう。

 働き方の違い

病院やクリニックでは院内で検査を行うのがメインであるのに対して、製薬会社で臨床開発モニターとして働く場合は、医療機関と企業との架け橋になって業務自体を取り仕切る必要があります。

一か所に腰を落ち着けて仕事をするというよりも、出張など外勤が多いことも特徴と言えるでしょう。

 給与の違い

臨床開発モニターは、病院で働く臨床検査技師に比べて年収が高いと言われています。

とくに製薬会社で働く臨床開発モニターの場合、開発医薬品の特許期間には大きな売り上げが見込めることから、企業から臨床試験を請け負っている会社の臨床開発モニターに比べて平均収入は高い傾向があります。

4. 製薬会社がおすすめな人

これまで考えてきた製薬会社で働く臨床開発モニターの特徴や仕事内容から、どのような人が向いていると言えるか考えてみたいと思います。

 コミュニケーション能力が高い人

臨床開発モニターは医師や治験コーディネーター、事務局担当者などとコミュニケーションを取る機会がたくさんあります。

そのため、話をするのが好きで、コミュニケーション能力が高い人に向いていると言えます。

 スケジュール管理が得意な人

臨床開発モニターは常にいくつかの業務を並行して行うことが求められるため、目的を達成するためにスケジュールを立て、それを遂行するために時間を管理する能力が必要です。

スケジュール管理が得意な人が向いている仕事といえるでしょう。