臨床検査技師の勤務先としては、行政機関の一つである「保健所」を挙げることができます。保健所で働くことに興味がある方は、どのような仕事を行うかということや、病院での業務との違いに関心があることでしょう。
今回は、臨床検査技師として保健所で働くことを考えている方に向けて、保健所の特徴や業務内容、どのような人が保健所で働くのが向いているのかについて解説します。
目次
1. 保健所の特徴
保健所は都道府県や政令指定都市、中核都市などに設置されていて、感染症対策や精神保健、難病対策など地域保健にとって重要な役割を果たしています。
そのため、臨床検査技師だけでなく、医師や保健師、精神保健福祉士などさまざまな専門職が働いています。
ここでは、数多くの業務の中で主なものを4つに絞ってご紹介します。
母子保健
赤ちゃんが生まれた家庭の健康面をサポートする仕事で、具体的には母子保健離乳食講習や乳幼児健康相談、3歳児健診などを行っています。
また、保健所内に子育て支援担当があって、地域の子育て支援を行っているところもあります。
精神保健福祉
保健所では多くの場合、精神保健福祉士が精神的な疾患や悩みについての相談も受け付けています。
助言や指導を行うだけでなく、社会復帰についての相談にも応じています。
病気の予防
臨床検査技師が関係してくるところですが、感染症や結核の予防に関した業務も行っています。最近ではエイズについての相談を受け付けたり、抗体検査を行ったりしている保健所もあります。
動物愛護や狂犬病の予防
ペットを飼っている方にとっては馴染みがあると思いますが、動物愛護や狂犬病の予防の仕事もしています。登録申請の受理や鑑札の交付を始め、狂犬病の予防注射票の交付も行っています。
保健所ではこのほかにも、健康教室や成人健診、訪問指導など国民の健康増進を目指してさまざまな活動を行っています。
2. 保健所での仕事内容
臨床検査技師が保健所で働く場合、地域で発生した感染症や食中毒の原因を明らかにするために細菌検査やウイルス検査をしたり、食品の残留農薬や添加物などを調べたりすることがおもな仕事になります。
また、単に検査を行うだけでなく、環境衛生や食品衛生に関する監視指導なども行います。そのため、法律を適正に運用して事業者に丁寧に説明するなど、指導することも大切な仕事内容の一つになります。
例えば、食中毒が発生したときには、体調不良者や疑いのある施設に対して聞き取りなどを速やかに行って、最終的には保健所長主導のもとに営業停止などの行政処分を行います。
このように感染症の発生を未然に防ぐなど、国民の健康や安全を守るうえで大きな役割を果たしています。
3. 病院との違い
臨床検査技師が保健所で働く場合の仕事内容について見てきましたが、病院で働くのと比べると仕事内容に大きな違いがあることが分かりました。
ほかにも保健所には病院で働くのと違いがあるので、そうした違いをいくつか考えてみましょう。
働き方の違い
緊急対応を行う大きな医療機関では臨床検査技師は夜勤や当直などがありますが、保健所で働く臨床検査技師は公務員なので、残業もほとんどありませんし、休暇も取得しやすいといったメリットがあります。
ただ基本的な勤務時間などは、病院で日勤として働くのとそれほど大きな変わりはありません。
給与の違い
保健所での給与については公務員なので、給与は臨床検査技師の平均年収と同程度か若干低くなることが多いようです。
ただ、給料は年齢や勤続年数とともに確実に上がっていきますし、給料以外の待遇面や福利厚生が手厚いといったメリットも大きいため、単純に給与の額だけで考えることはできません。
4. 保健所がおすすめな人
これまで考えてきた保健所の特徴や業務内容などを踏まえたうえで、臨床検査技師として保健所で働くのがおすすめなのはどのような人でしょうか。
ここでは、保健所で働くのがおすすめの人を考えてみたいと思います。
地域の健康を守ることに働きがいを感じる人
保健所は感染症の対策や食中毒が起きた時の対応など、一つの医療機関の中だけでなく、地域の健康を守ることにつながる仕事がメインです。また、検査だけでなく、事業者の指導など仕事内容にも幅があります。
そのため、保健所で働くことは県や市など、より広い範囲で活躍したいと考えている人におすすめです。
安定した待遇や職場環境を求める人
保健所で働くのは公務員として働くことを意味しますので、安定した待遇や職場環境で働くことができます。
民間の医療機関の場合は業績悪化や倒産などによってリストラや失業のリスクがありますが、保健所ならそうした心配はありません。将来的にも安定した待遇や職場環境で働きたい方にも保健所はおすすめです。